二 次 方 程 式 の 歴 史 ─ 古 代 バ ビ ロ ニ ア か ら 解 の 公 式 ま で
中学校 数学 第3学年 古典 A 数 と 式数 学 史 目安 25 分
学習のめあて
- 二 次 方 程 式 の 解 の 公 式 の 歴 史 を 知 る
- 古 代 バ ビ ロ ニ ア ・ イ ス ラ ム ・ イ タ リ ア の 並 行 発 展 を 学 ぶ
- 「algebra」 の 語 源 を 知 る
本文
二 次 方 程 式 と 解 の 公 式
中 3 数 学 で 学 ぶ「二 次 方 程 式」 ─ ax² + bx + c = 0。
そ し て、 こ の 方 程 式 の 全 て の 解 を 求 め る「解 の 公 式」:
x = (-b ± √(b² - 4ac)) / 2a
こ の 公 式 ─ 一 見 複 雑 だ が、 こ の 短 い 式 が、 ax² + bx + c = 0 と い う 全 て の 二 次 方 程 式 の 解 を 一 気 に 与 え て く れ る。
こ の 公 式 が 完 成 す る ま で に、 人 類 は 約 4000 年 か か っ た。
4000 年 の 旅
① 古 代 バ ビ ロ ニ ア (紀 元 前 1800 年 頃)
現 在 の イ ラ ク 地 方 で 栄 え た 古 代 バ ビ ロ ニ ア。 こ こ の 粘 土 板 に は、 既 に 二 次 方 程 式 の 解 法 が 記 さ れ て い た。
例 え ば こ ん な 問 題:
「正 方 形 の 面 積 と 一 辺 の 長 さ の 和 が 0.75 で あ る。 一 辺 の 長 さ は?」
→ 数 式 で 書 け ば x² + x = 3/4
バ ビ ロ ニ ア の 神 官 数 学 者 は、 言 葉 で「こ う 計 算 す れ ば 解 が 出 る」 と い う 手 順 を 記 録 し て い た。
そ れ は、 現 代 の「平 方 完 成」 に 相 当 す る 手 順 だ っ た。
4000 年 前 ─ 文 字 式 も、 「+」「=」 の 記 号 も 無 か っ た 時 代 に、 二 次 方 程 式 は す で に 解 け て い た の だ。
② 古 代 ギ リ シ ア (紀 元 前 4–3 世 紀)
古 代 ギ リ シ ア の 数 学 者 (エ ウ ク レ イ デ ス、 ア ル キ メ デ ス ら) は、 二 次 方 程 式 を 幾 何 学 的 に 解 い た。
「面 積 = ?」 の 形 で 問 題 を 立 て、 図 形 の 切 り 貼 り で 解 を 求 め た。
「代 数 と 幾 何 が 分 離 し て い た」 古 代 ギ リ シ ア で は、 こ う し た 幾 何 学 的 解 法 が 主 流 だ っ た。
③ イ ス ラ ム 黄 金 期 ─ ア ル・フ ワ ー リ ズ ミ ー (9 世 紀)
8–13 世 紀、 イ ス ラ ム 世 界 は 数 学 の 黄 金 期 を 迎 え て い た。
バ グ ダ ー ド の 「知 恵 の 館」 (バ イ ト ・ ア ル ・ ヒ ク マ) で、 ペ ル シ ャ・ア ラ ブ・イ ン ド・ギ リ シ ア の 数 学 者 が 集 ま り、 古 代 の 知 を 統 合 し て い た。
そ の 中 心 人 物 が ア ル・フ ワ ー リ ズ ミ ー (al-Khwārizmī, 780 頃 –850 頃) で あ る。
彼 は『代 数 学 の 書』(Kitab al-jabr wal-muqabala) で、 二 次 方 程 式 の 体 系 的 解 法 を ま と め た。
彼 が 用 い た 言 葉 「al-jabr」 (ア ル ・ ジ ャ ブ ル ─「移 項」 の 意) が、 12 世 紀 に ヨ ー ロ ッ パ に 伝 わ り、 「algebra」 (代 数) と な っ た。
さ ら に、 彼 の 名 前「al-Khwārizmī」 の ラ テ ン 語 訳「Algoritmi」 が、 「algorithm」 (ア ル ゴ リ ズ ム = 計 算 手 順) の 語 源 と な っ た。
中 3 で 君 が 学 ぶ「代 数」 と、 プ ロ グ ラ マ ー が 使 う「ア ル ゴ リ ズ ム」 ─ ど ち ら も、 1200 年 前 の ペ ル シ ャ の 数 学 者 の 名 前 を 残 し て い る の だ。
④ ル ネ サ ン ス イ タ リ ア ─ カ ル ダ ー ノ (16 世 紀)
16 世 紀、 ル ネ サ ン ス イ タ リ ア で、 数 学 は さ ら に 発 展 し た。
ジ ェ ロ ー ラ モ ・ カ ル ダ ー ノ (Gerolamo Cardano, 1501–1576) は、 1545 年 『大 法 (Ars Magna)』 で、 二 次 方 程 式・三 次 方 程 式・四 次 方 程 式 の 解 法 を 体 系 化 し た。
こ の 時 代 に、 「+」「-」「=」「√」 と い っ た 数 学 記 号 が 整 備 さ れ、 解 の 公 式 が 現 代 と 同 じ 形 で 表 現 で き る よ う に な っ た。
⑤ デ カ ル ト (1637) ─ 現 代 的 表 記
1637 年、 デ カ ル ト (本 サ イ ト chugakusugaku2) の『幾 何 学』 で、 現 代 と ほ ぼ 同 じ 「x、 y」 の 文 字 と 指 数 (x²) の 表 記 が 確 立。
解 の 公 式 が、 現 在 の 形 で 完 成 し た。
解 の 公 式 ─ 4000 年 の 結 晶
こ う し て 現 在 の 解 の 公 式:
x = (-b ± √(b² - 4ac)) / 2a
こ の 一 つ の 公 式 に、 4000 年 の 数 学 の 歴 史 が 結 晶 し て い る。
バ ビ ロ ニ ア の 神 官 → ギ リ シ ア の 幾 何 学 者 → イ ス ラ ム の 数 学 者 → イ タ リ ア の カ ル ダ ー ノ → デ カ ル ト → そ し て 中 3 の 君。
「algebra」 と「algorithm」 ─ ペ ル シ ャ の 遺 産
ア ル・フ ワ ー リ ズ ミ ー が 9 世 紀 に 残 し た 二 つ の 言 葉:
- al-jabr (ア ル ・ ジ ャ ブ ル) → algebra (代 数)
- al-Khwārizmī (ア ル ・ フ ワ ー リ ズ ミ ー、 人 名) → algorithm (ア ル ゴ リ ズ ム)
こ の 二 つ の 言 葉 が、 今 や 世 界 中 の 中 学・高 校 数 学、 そ し て プ ロ グ ラ ミ ン グ・AI の 基 礎 概 念 と し て 使 わ れ て い る。
1200 年 前 の 一 人 の ペ ル シ ャ 人 の 数 学 者 が、 こ う し て 21 世 紀 の 君 の 教 室 に 生 き 続 け て い る。
二 次 方 程 式 を 解 く こ と
中 3 で 二 次 方 程 式 を 解 く と き ─ 因 数 分 解 で も、 平 方 完 成 で も、 解 の 公 式 で も ─ 君 は、 4000 年 に わ た っ て 数 学 者 た ち が 磨 い て き た 一 つ の 知 恵 を、 使 っ て い る の だ。
そ し て、 中 3 で 二 次 方 程 式 を マ ス タ ー し た 君 は ─ 高 校 で「指 数 関 数」「対 数」「微 分 積 分」 と い う、 17 世 紀 以 降 の 新 し い 数 学 へ と 進 む。
4000 年 の 旅 は、 君 か ら 始 ま り、 ま だ 続 く。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- 二 次 方 程 式 (に じ ほ う て い し き) K ax² + bx + c = 0 と い う 形 の 方 程 式。 a、 b、 c は 定 数 で a ≠ 0。 解 x は「解 の 公 式」 で 求 め ら れ る。 中 3 数 学 の 中 心 単 元。
- 解 の 公 式 (か い の こ う し き) K x = (-b ± √(b²-4ac)) / 2a。 二 次 方 程 式 の 全 て の 解 を、 a、 b、 c か ら 直 接 求 め ら れ る 公 式。 16 世 紀 に 完 成 形 と な っ た。
- 古 代 バ ビ ロ ニ ア (紀 元 前 1800 年 頃) K 現 在 の イ ラ ク 地 方 の 古 代 文 明。 粘 土 板 に 二 次 方 程 式 の 解 法 が 多 数 残 さ れ て い る。 4000 年 前 か ら、 二 次 方 程 式 は 解 か れ て い た。
- ア ル ・ フ ワ ー リ ズ ミ ー (al-Khwārizmī) K 780 頃 –850 頃。 ペ ル シ ャ の 数 学 者・天 文 学 者。 イ ス ラ ム 黄 金 期 (バ グ ダ ー ド) で 活 躍。 『算 術』 『代 数 学 の 書』 を 著 し、 二 次 方 程 式 の 解 法 を 体 系 化。 「algebra (代 数)」「algorithm (ア ル ゴ リ ズ ム)」 の 語 源 は 彼 の 名 前。
- 「al-jabr」 (ア ル ・ ジ ャ ブ ル) K ア ル ・ フ ワ ー リ ズ ミ ー が 著 書 で 使 っ た 言 葉。 「移 項 (=式 の 中 で 項 を 反 対 側 に 移 す こ と)」 の 意 味。 こ の 言 葉 が 12 世 紀 ヨ ー ロ ッ パ に 伝 わ り、 「algebra」 (代 数) と な っ た。
- 平 方 完 成 (へ い ほ う か ん せ い) K 二 次 式 ax² + bx + c を、 a(x + h)² + k の 形 に 書 き 換 え る こ と。 こ れ に よ り 解 の 公 式 を 導 け る。
- 因 数 分 解 (い ん す う ぶ ん か い) K 式 を 二 つ の 積 の 形 に 分 解 す る こ と。 例 ─ x² - 5x + 6 を (x - 2)(x - 3) に 分 解。 二 次 方 程 式 の も う 一 つ の 解 法。
- カ ル ダ ー ノ (Gerolamo Cardano) K 1501–1576。 イ タ リ ア の 数 学 者・医 師。 『大 法 (Ars Magna)』(1545) で 三 次 ・ 四 次 方 程 式 の 解 法 を 体 系 化 し た。 二 次 方 程 式 の 解 の 公 式 も こ の 時 代 に 完 成 し た。
考えてみよう
- 二 次 方 程 式 が 4000 年 前 の 古 代 バ ビ ロ ニ ア で 既 に 解 か れ て い た こ と を、 ど う 思 い ま す か?
- 「algebra」 の 語 源 を 知 っ て い ま し た か? こ の 知 識 は あ な た に と っ て 意 味 を 持 ち ま す か?
- 解 の 公 式 を 覚 え る 意 味 は あ る で し ょ う か? (計 算 機 で も 解 け る 時 代 に)
- イ ス ラ ム 黄 金 期 (9 世 紀) の 数 学 が、 ヨ ー ロ ッ パ 数 学 の 元 と な っ た こ と を ど う 思 い ま す か?
指導要領との対応
このページは、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」数学 第3学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 中3数学(A) — 二 次 方 程 式 ─ 因 数 分 解・解 の 公 式・平 方 完 成
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
指導案 教員向け・授業展開の例
中3 数 学 「二 次 方 程 式」 単 元 と 接 続。 解 の 公 式 の 数 学 史 的 背 景 を 通 し て、 数 学 の 国 際 的・歴 史 的 連 続 性 を 体 感 す る。
指導目標
- 二 次 方 程 式 の 解 法 を 把 握 す る
- 数 学 史 (バ ビ ロ ニ ア・イ ス ラ ム・イ タ リ ア) を 知 る
- 「algebra」 の 語 源 を 学 ぶ
授業の流れ
- 5分 簡 単 な 二 次 方 程 式 を 解 い て み る
- 15分 解 の 公 式 と 平 方 完 成 を 復 習
- 15分 数 学 史 (バ ビ ロ ニ ア → イ ス ラ ム → ヨ ー ロ ッ パ)
- 10分 「algebra」 の 語 源 を 紹 介
発問例・議論のポイント
- 数 学 の 国 際 性
- イ ス ラ ム 黄 金 期 の 貢 献
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出典・ライセンス
- 原文: 数学史 編集部「二 次 方 程 式 の 歴 史 ─ 古 代 バ ビ ロ ニ ア か ら 解 の 公 式 ま で」(-1800年)
- 入力テキスト: 数学史 各種 文献 (底本:二 次 方 程 式 ax² + bx + c = 0 の 解 法 の 歴 史。 古 代 バ ビ ロ ニ ア の 粘 土 板 か ら、 9 世 紀 イ ス ラ ム の ア ル ・ フ ワ ー リ ズ ミ ー、 16 世 紀 イ タ リ ア の カ ル ダ ー ノ ま で。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors