宮 本 武 蔵『五 輪 書』 ─ 剣 豪 が 書 い た 武 道 哲 学
中学校 体育 第2学年 古典 武 道 史日 本 思 想剣 道 目安 30 分
学習のめあて
- 宮 本 武 蔵 と 五 輪 書 を 知 る
- 武 道 の 哲 学 を 理 解 す る
- 「兵 法 と 大 工 の 道」 の 喩 え を 考 え る
本文
60 余 度 の 勝 負、 一 度 も 負 け ず
1584 年 (諸 説 あ り)、 武 蔵 は 播 磨 か 美 作 に 生 ま れ る。 父 も 兵 法 家 だ っ た。 13 歳 の 時、 初 め て の 真 剣 勝 負 で 新 当 流 の 有 馬 喜 兵 衛 を 倒 し て 以 来、 60 余 度 の 勝 負 で 一 度 も 負 け な か っ た と『五 輪 書』 冒 頭 で 自 ら 記 し て い る。
29 歳 の 慶 長 17 年 (1612)、 関 門 海 峡 の 巌 流 島 (船 島) で 行 っ た 佐 々 木 小 次 郎 戦 が 最 も 有 名 だ。 約 束 の 時 間 に わ ざ と 遅 れ、 漕 ぎ な が ら 削 っ た 櫂 (か い) の 木 刀 で 小 次 郎 を 倒 し た と 伝 え ら れ る。
二 天 一 流 ─ 二 つ の 太 刀 を 同 時 に 持 つ
武 蔵 が 開 い た 流 派 「二 天 一 流」 は、 太 刀 と 脇 差 を 同 時 に 持 つ 「二 刀 流」 が 特 徴 だ。 普 通 の 剣 士 が 一 本 で 戦 う 中、 武 蔵 は 二 本 同 時 に 操 る 革 命 的 な 技 法 を 編 み 出 し た。
武 蔵 は 言 う ─ 「人 は 二 本 の 手 を 持 つ。 な ぜ 一 本 し か 使 わ な い の か」。 常 識 を 疑 い、 本 質 か ら 考 え 直 す ─ こ れ が 武 蔵 の 武 道 で あ る。
『五 輪 書』 ─ 死 の 直 前 に 残 し た 哲 学 書
晩 年 の 武 蔵 は、 細 川 家 (熊 本) に 客 分 と し て 招 か れ た。 寛 永 17 年 (1640)、 56 歳。 熊 本 城 下 で 5 年 過 ご し、 死 の 1–2 ヶ 月 前 (正 保 2 年・1645) に 霊 巌 洞 (れ い が ん ど う) と い う 山 中 の 洞 窟 で『五 輪 書』 を 完 成 さ せ た。
五 巻 構 成 ─
- 地 之 巻 ─ 兵 法 の 基 礎 (大 工 の 道 の 喩 え)
- 水 之 巻 ─ 技 法 (太 刀 の 持 ち 方 ・ 構 え 方)
- 火 之 巻 ─ 戦 い 方 (実 戦 の 心 構 え)
- 風 之 巻 ─ 他 流 派 へ の 批 評
- 空 之 巻 ─ 悟 り (兵 法 の 究 極)
「兵 法 の 道 は 大 工 の 道 に 似 る」
地 之 巻 に、 有 名 な 一 節 が あ る ─ 「兵 法 の 道 を 一 道 と 心 得 て、 大 工 の 道 に 寄 す」。 武 道 と 大 工 仕 事 は、 一 見 違 う が、 共 通 の 原 理 で 動 い て い る。
棟 梁 (大 工 の リ ー ダ ー) は ─
- 建 物 全 体 の 設 計 を 把 握 す る
- 木 の 性 質 を 見 極 め、 適 材 適 所 に 配 す る
- 道 具 を 大 切 に 手 入 れ す る
- 弟 子 の 力 量 に 応 じ て 仕 事 を 与 え る
武 道 で も 同 じ ─ 全 体 を 見、 人 を 活 か し、 道 具 (武 器) を 大 切 に し、 自 ら 修 練 す る。 こ の 原 理 は、 仕 事・部 活・勉 強 ─ 君 が 取 り 組 む 全 て に 通 じ る。
「空」 ─ 悟 り の 境 地
最 終 巻「空 之 巻」 は、 短 い が 最 も 深 い。 武 蔵 は 言 う ─ 「兵 法 の 道 を 究 め れ ば、 何 物 も 無 い『空』 の 境 地 に 至 る」。
真 の 強 さ と は、 力 や 技 で は な く、 心 が 「何 物 に も 動 じ な い」 状 態。 強 い 風 が 吹 い て も 動 か な い 大 木 の よ う に、 戦 い の 中 で も 心 が 澄 ん で い る ─ こ れ が 武 蔵 の 言 う 「空」 で あ る。
世 界 が 読 む『五 輪 書』
『五 輪 書』 は 現 代、 世 界 中 で 読 ま れ て い る。 ア メ リ カ で は ハ ー バ ー ド 大 学 の M B A で 経 営 学 の 古 典 と し て 学 ば れ、 ス ポ ー ツ ・ 軍 事 ・ ビ ジ ネ ス 戦 略 書 と し て も 翻 訳 さ れ て い る。
400 年 前 の 剣 豪 が 残 し た 哲 学 が、 国 境 と 時 代 を 超 え て 生 き 続 け て い る ─ そ れ が 日 本 武 道 思 想 の 普 遍 性 で あ る。
結 び ─ 君 の「兵 法」 を 探 そ う
武 蔵 が 教 え る の は、 単 な る 剣 術 で は な い。 「何 か 一 つ の 道 を 究 め よ。 そ う す れ ば、 全 て の 道 に 通 ず る」 ─ こ の 言 葉 を 心 に 留 め て、 君 が 打 ち 込 む 一 つ の こ と (部 活・勉 強・趣 味) を 究 め て み よ う。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- 宮 本 武 蔵 (み や も と む さ し) K 1584?–1645。 播 磨 国 (現 兵 庫 県 南 部) ま た は 美 作 国 (現 岡 山 県) 生 ま れ と さ れ る。 13 歳 で 初 め て の 真 剣 勝 負 で 勝 利 し て 以 来、 60 余 度 の 勝 負 で 一 度 も 負 け な か っ た と 自 ら 記 す。 二 天 一 流 (二 刀 流) を 開 く。 巖 流 島 の 決 闘 (1612, 佐 々 木 小 次 郎 戦) で 有 名。
- 五 輪 書 (ご り ん の し ょ) K 武 蔵 が 1645 年 (死 の 1–2 ヶ 月 前) に 熊 本 ・ 霊 巌 洞 で 完 成 さ せ た 兵 法 書。 五 巻 構 成 ─ 地 之 巻 (兵 法 の 基 礎)・水 之 巻 (技 法)・火 之 巻 (戦 い 方)・風 之 巻 (他 流 派 批 評)・空 之 巻 (悟 り)。 現 代 で は 世 界 ベ ス ト セ ラ ー。
- 二 天 一 流 (に て ん い ち り ゅ う) K 武 蔵 が 開 い た 剣 術 流 派。 太 刀 と 脇 差 を 同 時 に 持 つ「二 刀 流」 を 基 本 と す る。 名 前 は「二 つ の 天」(太 刀 と 脇 差) が 一 体 と な る こ と か ら。 現 在 も 流 派 が 継 承 さ れ て い る。
- 巖 流 島 の 決 闘 (が ん り ゅ う じ ま の け っ と う) K 慶 長 17 年 (1612) 4 月 13 日、 関 門 海 峡 の 船 島 (現 山 口 県 下 関 市・現 在 の 巌 流 島) で、 武 蔵 (当 時 29 歳) が 佐 々 木 小 次 郎 と 行 っ た と さ れ る 決 闘。 武 蔵 が 木 刀 で 小 次 郎 を 倒 し た と 伝 え ら れ る。 武 蔵 の 名 を 不 朽 に し た。
- 兵 法 (へ い ほ う) K 武 蔵 の 用 法 で は「武 道」「戦 い 方」 を 意 味 す る。『五 輪 書』 で は、 個 人 の 剣 術 か ら 大 軍 の 戦 略 ま で、 一 貫 し た 原 理 で 説 明 す る (「一 道 を 知 れ ば、 万 道 に 通 ず」)。
- 大 工 の 道 (だ い く の み ち) K 武 蔵 が『五 輪 書』 地 之 巻 で 用 い た 喩 え。 「兵 法 の 道 は、 大 工 の 道 に 似 て い る」 ─ 棟 梁 (リ ー ダ ー) は 全 体 を 見、 木 (人 材) を 適 材 適 所 に 配 し、 道 具 を 大 切 に す る。 武 道 ・ 仕 事 ・ 人 生 全 て に 通 ず る 原 理。
考えてみよう
- 「兵 法 の 道 と 大 工 の 道 は 似 て い る」 と い う 武 蔵 の 言 葉 を、 君 の 言 葉 で 解 釈 し て み ま し ょ う。
- 60 度 以 上 の 真 剣 勝 負 に 一 度 も 負 け な か っ た 武 蔵 が、 「勝 つ こ と」 よ り 「悟 り」 を 重 視 し た 理 由 を 考 え ま し ょ う。
- 現 代 ス ポ ー ツ の ト ッ プ 選 手 が『五 輪 書』 を 読 む 理 由 を 想 像 し ま し ょ う。
- 「二 刀 流」 の よ う に、 君 が「常 識 と 違 う 方 法」 で う ま く や っ た 経 験 を 思 い 出 し て み ま し ょ う。
指導要領との対応
このページは、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」体育 第2学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 中学体育 — 我 が 国 固 有 の 武 道 の 伝 統 と 文 化 を 理 解 す る
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
指導案 教員向け・授業展開の例
中2 体 育 (新 collection) で、 武 道 哲 学 の 古 典 を 読 む。 剣 道 や 部 活 動 に つ な が る 思 想 を 学 ぶ。
指導目標
- 武 蔵 と 五 輪 書 を 知 る
- 武 道 の 哲 学 を 理 解
- 兵 法 と 仕 事 の 共 通 原 理 を 学 ぶ
授業の流れ
- 10分 武 蔵 の 生 涯 (60 度 の 勝 負)
- 15分 『五 輪 書』 地 之 巻「大 工 の 道」 を 読 む
- 10分 剣 道 と 武 蔵 思 想 の 関 係
- 10分 「兵 法 を 自 分 の 道 に 応 用」 を 考 え る
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出典・ライセンス
- 原文: 宮本武蔵 (みやもと むさし)「宮 本 武 蔵『五 輪 書』 ─ 剣 豪 が 書 い た 武 道 哲 学」(1645年)
- 入力テキスト: 国立国会図書館デジタルコレクション / 細川家永青文庫 (底本:宮 本 武 蔵『五 輪 書』(正 保 2 年・1645)。 武 蔵 が 死 の 直 前、 細 川 家 に 仕 え て い た 熊 本 で 完 成 さ せ た 兵 法 書。 地・水・火・風・空 の 五 巻 構 成。 60 余 度 の 真 剣 勝 負 で 一 度 も 負 け な か っ た 剣 豪 の、 武 道 と 人 生 の 哲 学。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors