牧 野 富 太 郎 ─ 日 本 植 物 学 の 父 (生 物 学 編) の表紙イラスト

牧 野 富 太 郎 ─ 日 本 植 物 学 の 父 (生 物 学 編)

高等学校 生物 第1学年 植 物 分 類 学生 物 学 史 目安 25 分

作者
牧野富太郎 (まきの とみたろう)(1862–1957)
原作発表
1940 年(明治~昭和)
出典
青空文庫 / 牧野富太郎著作
底本:牧 野 富 太 郎 の 生 涯 と 業 績 を、 高 校 生 物 の 視 点 で 再 読 す る 教 材。 中 学 既 出 教 材 (chugakurika1/makino-shokubutsu) を 補 完。

学習のめあて

  • 牧 野 富 太 郎 の 業 績 を 生 物 分 類 学 の 視 点 で 学 ぶ
  • リ ン ネ の 二 名 法 を 理 解
  • 植 物 分 類 学 の 国 際 性 を 知 る

本文

中 学 → 高 校 ─ 牧 野 を 再 読

中 学 で、 君 は 牧 野 富 太 郎 (1862–1957) を 学 ん だ (本 サ イ ト chugakurika1/makino-shokubutsu)。
「日 本 植 物 学 の 父」、 ヤ マ ト グ サ の 発 見、 約 1500 種 の 命 名、 NHK 朝 ド ラ 「ら ん ま ん」 の モ デ ル。

こ こ で は、 同 じ 牧 野 を ─ 高 校 生 物 「分 類 学」 の 視 点 で、 一 歩 深 め て 学 ぼ う。

リ ン ネ の 二 名 法 ─ 牧 野 が 使 っ た「世 界 共 通 語」

牧 野 が 約 1500 種 の 植 物 に 与 え た「学 名」 ─ そ の 仕 組 み を 確 認 し よ う。

学 名 は、 ス ウ ェ ー デ ン の 植 物 学 者 カ ー ル・リ ン ネ (Carl Linnaeus, 1707–1778) が 1753 年 に 確 立 し た「二 名 法」 で 書 か れ る。

学 名 = 属 名 (大 き い 分 類) + 種 小 名 (具 体 的 な 種)

例:

  • ヤ マ ザ ク ラ ─ Cerasus jamasakura
  • ソ メ イ ヨ シ ノ ─ Cerasus × yedoensis
  • ヤ マ ト グ サ ─ Theligonum japonicum
  • ヒ ト ─ Homo sapiens

こ の 2 語 の ラ テ ン 語 で、 世 界 中 の 生 物 学 者 が 同 じ 植 物 を 指 す こ と が で き る。
日 本 人 で も、 ア フ リ カ 人 で も、 ブ ラ ジ ル 人 で も、 「Cerasus jamasakura」 と 書 け ば 同 じ「ヤ マ ザ ク ラ」 を 指 す。
こ れ こ そ が、 牧 野 が 1500 種 に 与 え た「世 界 共 通 言 語」 で あ る。

分 類 の 階 層

生 物 分 類 学 で は、 種 を こ う 階 層 化 す る:

階 層ヤ マ ザ ク ラ の 例
界 (Kingdom)植 物 界 Plantae
門 (Phylum)被 子 植 物 門 Angiospermae
綱 (Class)双 子 葉 植 物 綱 Magnoliopsida
目 (Order)バ ラ 目 Rosales
科 (Family)バ ラ 科 Rosaceae
属 (Genus)サ ク ラ 属 Cerasus
種 (Species)ヤ マ ザ ク ラ C. jamasakura

牧 野 は、 こ う し た 階 層 的 分 類 を 日 本 で 普 及 さ せ、 1500 種 を 正 確 に 位 置 づ け た。

ヤ マ ト グ サ 1889 ─ 改 め て の 意 味

1889 年、 22 歳 の 牧 野 が ヤ マ ト グ サ (Theligonum japonicum) を 命 名・発 表 し た。
こ の 業 績 を、 分 類 学 の 視 点 で 再 評 価 す る と:

  • 「japonicum」 ─ ラ テ ン 語 で「日 本 の」 の 意。 種 小 名 に 国 名 を 入 れ た こ と で「こ の 種 が 日 本 で 発 見 さ れ た」 こ と を 国 際 的 に 記 録
  • 「Theligonum」 ─ こ の 属 自 体 は 既 知 だ っ た が、 そ こ に「日 本 産」 の 新 種 を 加 え た こ と が 国 際 学 界 で 認 め ら れ た
  • こ の 発 表 を 国 際 植 物 学 雑 誌 で 行 う こ と で、 「日 本 人 も 国 際 分 類 学 に 貢 献 で き る」 こ と を 証 明 し た

こ れ ま で 日 本 の 植 物 は、 シ ー ボ ル ト (オ ラ ン ダ) や ツ ン ベ ル グ (ス ウ ェ ー デ ン) な ど 外 国 人 に よ っ て 命 名 さ れ て き た。
牧 野 の ヤ マ ト グ サ 発 表 は、 「日 本 人 自 身 が 自 国 の 自 然 を 命 名 す る」 時 代 の 出 発 点 だ っ た。

国 際 植 物 命 名 規 約 と 現 代

リ ン ネ の 二 名 法 を 国 際 的 に 制 度 化 し た「国 際 植 物 命 名 規 約」(現 在 は「藻 類・菌 類・植 物 国 際 命 名 規 約」 ICN) は、 1867 年 か ら 整 備 さ れ、 数 年 ご と に 改 訂 さ れ て い る。

こ の 規 約 に よ り、 全 世 界 の 約 40 万 種 の 植 物 が 統 一 さ れ た 学 名 で 整 理 さ れ て い る。
そ し て、 毎 年 約 2000 種 の 新 種 が 命 名 さ れ 続 け て い る。

牧 野 が 1889 年 に 始 め た「日 本 人 が 自 国 植 物 を 命 名 す る」 仕 事 は、 今 も 多 く の 日 本 人 植 物 学 者 が 受 け 継 い で い る。

牧 野 の 標 本 と デ ジ タ ル 化

牧 野 が 残 し た 約 40 万 点 の 標 本 は、 現 在、 高 知 県 立 牧 野 植 物 園・東 京 大 学 総 合 研 究 博 物 館・国 立 科 学 博 物 館 な ど に 所 蔵 さ れ て い る。

そ し て 21 世 紀 に 入 り、 こ れ ら の 標 本 が デ ジ タ ル 化 さ れ、 世 界 中 の 研 究 者 が オ ン ラ イ ン で ア ク セ ス で き る よ う に な っ た (例: GBIF、 高 知 県 立 牧 野 植 物 園 デ ジ タ ル ア ー カ イ ブ)。

160 年 前 に 牧 野 が 山 で 採 集 し た 一 枚 の 押 し 葉 が、 今 や ク リ ッ ク 一 つ で 世 界 中 か ら 見 ら れ る。
こ れ も、 リ ン ネ の 二 名 法 と い う「世 界 共 通 語」 の 上 に 築 か れ た、 21 世 紀 の 学 問 の 形 で あ る。

君 自 身 の 学 名 探 し

家 の 近 く の 公 園 で、 一 種 の 植 物 を 選 び、 学 名 を 調 べ て み よ う。

ス マ ホ の 植 物 同 定 ア プ リ (Pl@ntNet、 PictureThis 等) を 使 え ば、 写 真 か ら 即 座 に 種 と 学 名 が 判 別 で き る。

そ し て そ の 学 名 を Google Scholar で 検 索 す る と ─ 世 界 中 の 研 究 者 が そ の 植 物 に つ い て 何 を 書 い て き た か が、 一 気 に 開 け る。

こ れ こ そ が、 リ ン ネ と 牧 野 が 君 に 残 し た「国 際 学 問 共 同 体」 へ の パ ス ポ ー ト で あ る。

語句の意味

各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について

  • 牧野富太郎 (まきの とみたろう) K 1862–1957。 高 知 県 佐 川 町 生 ま れ。 「日 本 植 物 学 の 父」。 約 1500 種 を 命 名、 約 40 万 点 の 標 本、 約 5000 図 の 植 物 画 を 残 す。 NHK 朝 ド ラ「ら ん ま ん」(2023) モ デ ル。 本 サ イ ト chugakurika1/makino-shokubutsu で 既 出。
  • 植 物 分 類 学 (し ょ く ぶ つ ぶ ん る い が く) K 植 物 を「種・属・科・目・綱・門・界」 と 階 層 的 に 分 類 す る 学 問。 生 物 学 の 基 礎 領 域 の 一 つ。 牧 野 は こ の 領 域 で 日 本 の 植 物 学 を 世 界 級 に 引 き 上 げ た。
  • 二 名 法 (に め い ほ う ・ binomial nomenclature) K ス ウ ェ ー デ ン の 植 物 学 者 カ ー ル・リ ン ネ (Carl Linnaeus, 1707–1778) が 1753 年 に 確 立。 全 て の 生 物 を「属 名 + 種 小 名」 の ラ テ ン 語 2 語 で 表 す。 例 ─ Cerasus jamasakura (ヤ マ ザ ク ラ)。 牧 野 は 約 1500 種 の 日 本 産 植 物 に こ の 学 名 を 与 え た。
  • ヤ マ ト グ サ K 1884 年 牧 野 が 高 知 県 で 発 見、 1889 年 学 名『Theligonum japonicum』 と し て 発 表。 日 本 人 が 自 国 植 物 に 学 名 を 与 え た 最 初 の 例。
  • 標 本 (ひ ょ う ほ ん) K 植 物 を 採 集 し、 押 し 葉 に し て 保 存 し た も の。 ラ テ ン 語 で「タ イ プ 標 本」(holotype) が 学 名 の 基 準。 牧 野 は 約 40 万 点 の 標 本 を 残 し た。
  • 国 際 植 物 命 名 規 約 (International Code of Nomenclature) K 全 世 界 の 植 物 学 者 が 守 る 命 名 ル ー ル。 リ ン ネ の 二 名 法 を 国 際 的 に 制 度 化 し た も の。 1867 年 か ら 規 定 整 備、 数 年 ご と に 改 訂。

考えてみよう

  1. 牧 野 の 中 学 既 出 教 材 と 比 較 し て、 こ の 高 校 教 材 で 新 し く 学 ん だ 視 点 は 何 で す か?
  2. リ ン ネ の 二 名 法 が「世 界 共 通 言 語」 と し て 機 能 す る 理 由 を 考 え ま し ょ う。
  3. あ な た の 身 の 回 り の 植 物 の 学 名 を 一 つ 調 べ て み ま し ょ う。
指導案 教員向け・授業展開の例

高1 生 物 で 「分 類 学」 単 元 と 接 続。 中 学 で 学 ん だ 牧 野 富 太 郎 を、 国 際 植 物 命 名 規 約 と リ ン ネ の 視 点 か ら 深 め る。

授業時数
1時限 (45分)
準備
牧 野 日 本 植 物 図 鑑、リ ン ネ 略 伝

指導目標

  • 牧 野 の 業 績 を 分 類 学 の 視 点 で 再 読
  • リ ン ネ の 二 名 法 を 把 握
  • 国 際 的 植 物 学 の 制 度 を 知 る

授業の流れ

  1. 10分 中 学 既 出 教 材 を 振 り 返 る
  2. 15分 リ ン ネ の 二 名 法 と 牧 野 の 仕 事
  3. 10分 国 際 植 物 命 名 規 約 を 紹 介
  4. 10分 身 近 な 植 物 の 学 名 調 べ

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出典・ライセンス

  • 原文: 牧野富太郎 (まきの とみたろう)「牧 野 富 太 郎 ─ 日 本 植 物 学 の 父 (生 物 学 編)」(1940年)
  • 入力テキスト: 青空文庫 / 牧野富太郎著作 (底本:牧 野 富 太 郎 の 生 涯 と 業 績 を、 高 校 生 物 の 視 点 で 再 読 す る 教 材。 中 学 既 出 教 材 (chugakurika1/makino-shokubutsu) を 補 完。)
  • 原文の権利: パブリックドメイン
  • 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors