高 野 辰 之『春 が 来 た』─ 日 本 唱 歌 の 故 郷
中学校 音楽 第1学年 唱 歌日 本 音 楽 史歌 詞 鑑 賞 目安 25 分
学習のめあて
- 『春 が 来 た』 を 唄 え る
- 高 野 辰 之・岡 野 貞 一 コ ン ビ を 知 る
- 唱 歌 の 文 化 的 意 義 を 学 ぶ
本文
「春 が 来 た 春 が 来 た ど こ に 来 た」
日 本 で 育 っ た ほ ぼ 全 て の 人 が、 一 度 は 歌 っ た こ と が あ る だ ろ う 唱 歌『春 が 来 た』。 明 治 43 年 (1910) に 発 表 さ れ て か ら、 115 年 ─ 三 世 代 を 超 え て 歌 い 継 が れ て き た。
シ ン プ ル で 覚 え や す い 歌 詞、 美 し く 静 か な メ ロ デ ィ ー、 そ し て 日 本 人 の 春 の 風 景 そ の も の。 中 1 音 楽 で、 こ の 名 唱 歌 を 深 く 味 わ お う。
高 野 辰 之 ─ 信 州 の 国 文 学 者
作 詞 者 ・ 高 野 辰 之 (た か の た つ ゆ き ・ 1876–1947) は、 長 野 県 中 野 市 (現 ・ 旧 永 江 村) の 山 村 で 生 ま れ た。 信 州 の 山 と 田 園 の 風 景 が、 後 の 唱 歌 の 多 く の 原 風 景 と な っ た。
東 京 帝 国 大 学 で 国 文 学 を 学 び、 文 部 省 国 語 教 科 書 編 纂 委 員 と し て 活 躍。 国 語 と 唱 歌 の 両 方 を 通 し て、 日 本 の 子 ど も の 教 育 に 大 き く 貢 献 し た。
代 表 作 ─ 『故 郷』『朧 月 夜』『紅 葉』『春 が 来 た』。 い ず れ も 四 季 ・ 故 郷 を 歌 っ た 名 唱 歌。
岡 野 貞 一 ─ 鳥 取 か ら 東 京 音 楽 学 校 へ
作 曲 者 ・ 岡 野 貞 一 (お か の て い い ち ・ 1878–1941) は、 鳥 取 市 生 ま れ。 東 京 音 楽 学 校 (現 東 京 芸 術 大 学) で 西 洋 音 楽 を 学 び、 後 に 同 校 助 教 授。
日 本 古 来 の 旋 律 美 と 西 洋 音 楽 の 構 造 を 融 合 し た、 美 し い 唱 歌 を 多 数 作 曲。 高 野 辰 之 と 組 ん で 数 多 く の 名 曲 を 生 ん だ。
な ぜ 作 詞・作 曲 者 名 が 公 表 さ れ な か っ た の か
明 治 ~ 大 正 ~ 昭 和 戦 前 ま で、 文 部 省 唱 歌 は 作 詞・作 曲 者 名 を 公 表 し な か っ た。 理 由 は ─
- 「国 民 共 通 の 文 化」 と し て、 個 人 著 作 物 を 超 え た 公 共 財 と し て 扱 う 為
- 歌 詞 や 旋 律 を 必 要 に 応 じ て 改 訂 す る 為 (作 者 が い る と 変 え に く い)
こ の 為、 戦 後 ま で『春 が 来 た』『故 郷』『紅 葉』 等 の 作 者 が 不 明 と さ れ て き た。 戦 後 の 研 究 で、 高 野 辰 之 ・ 岡 野 貞 一 コ ン ビ の 業 績 で あ る こ と が 判 明 し た。
『春 が 来 た』 の 歌 詞 構 造 ─ 三 番 の 場 面 展 開
『春 が 来 た』 の 歌 詞 は、 三 番 構 成 で 場 面 が 移 り 変 わ る ─
- 一 番 ─ 「山」 に 春 が 来 た
- 二 番 ─ 「里」 に 春 が 来 た
- 三 番 ─ 「野」 に 春 が 来 た
山 → 里 → 野 ─ 高 い と こ ろ か ら 低 い と こ ろ へ、 視 線 が 下 り て く る。 春 は、 山 か ら 始 ま っ て、 里 を 通 り、 野 に 降 り る ─ 日 本 人 の 自 然 観 が 凝 縮 さ れ て い る。
「ど こ に 来 た」 の 反 復 ─ シ ン プ ル の 美
「春 が 来 た 春 が 来 た ど こ に 来 た」 ─ 同 じ 言 葉 が 繰 り 返 さ れ る。 子 ど も に も 覚 え や す く、 リ ズ ム も 良 い。
そ し て 「山 に 来 た 里 に 来 た 野 に も 来 た」 ─ こ の シ ン プ ル さ が、 名 唱 歌 と し て 100 年 歌 い 継 が れ る 力 と な っ て い る。
音 楽 的 特 徴 ─ 二 部 形 式・四 拍 子・ハ 長 調
『春 が 来 た』 は、 二 部 形 式 (A-A')、 四 拍 子、 ハ 長 調 で 書 か れ て い る。 シ ン プ ル で、 子 ど も で も 覚 え や す く、 歌 い や す い 構 造。
メ ロ デ ィ ー の 上 下 が ゆ る や か で、 山 か ら 里 へ 降 り る 風 景 と 重 な る。 詞 と 曲 が 一 体 と な っ た 名 曲。
結 び ─ 君 の「春 が 来 た」 を 探 そ う
115 年 前、 高 野 辰 之 が 信 州 の 山 村 で 見 た 春 ─ 雪 解 け、 桜、 鳥 の 声、 田 植 え の 準 備 ─ は、 君 が 今 見 て い る 春 と 同 じ だ ろ う か、 違 う だ ろ う か。
教 室 で『春 が 来 た』 を 唄 う 時、 100 年 前 の 日 本 の 子 ど も た ち と、 同 じ 旋 律 を 共 有 し て い る こ と を 思 い 出 そ う。 唱 歌 は、 時 代 を 超 え て 心 を つ な ぐ 文 化 で あ る。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- 高 野 辰 之 (た か の た つ ゆ き) K 1876–1947。 長 野 県 中 野 市 (現 ・ 旧 永 江 村) 生 ま れ の 国 文 学 者・作 詞 家。 文 部 省 国 語 教 科 書 編 纂 委 員。 岡 野 貞 一 と 組 ん で『春 が 来 た』『故 郷』『紅 葉』『朧 月 夜』 等、 多 く の 名 唱 歌 の 詞 を 書 い た。
- 岡 野 貞 一 (お か の て い い ち) K 1878–1941。 鳥 取 市 生 ま れ の 作 曲 家・東 京 音 楽 学 校 (現 東 京 芸 大) 助 教 授。 高 野 辰 之 と 組 ん で 多 数 の 唱 歌 を 作 曲。 多 く は 文 部 省 唱 歌 と し て 作 詞 者 ・ 作 曲 者 不 明 と さ れ て き た が、 戦 後 の 研 究 で 高 野 ・ 岡 野 の 作 と 判 明。
- 文 部 省 唱 歌 (も ん ぶ し ょ う し ょ う か) K 明 治 期 か ら 昭 和 戦 後 期 ま で、 文 部 省 が 編 纂 し た 学 校 唱 歌。 国 民 共 通 の 文 化 を 育 て る 目 的 で、 作 詞 者・作 曲 者 名 は 公 表 さ れ な か っ た。『春 が 来 た』『故 郷』『仰 げ ば 尊 し』『蛍 の 光』 等。
- 尋 常 小 学 読 本 唱 歌 (じ ん じ ょ う し ょ う が く ど く ほ ん し ょ う か) K 明 治 43 年 (1910) に 文 部 省 が 発 行 し た 唱 歌 集。 国 語 教 科 書「尋 常 小 学 読 本」 に 対 応 す る 唱 歌 を 集 め た も の。『春 が 来 た』 は こ の 中 の 一 曲。
- 三 部 形 式 ・ 二 部 形 式 (さ ん ぶ・に ぶ け い し き) K 音 楽 の 構 造。 『春 が 来 た』 は 二 部 形 式 (A-A') で、 A (8 小 節) → A' (繰 り 返 し と 変 形 8 小 節) の 構 造。 シ ン プ ル で 子 ど も に も 歌 い や す い。
考えてみよう
- 『春 が 来 た』 を 一 番 か ら 三 番 ま で 順 に 唄 う と、 ど ん な 場 面 が 移 り 変 わ り ま す か?
- 「春 が 来 た 春 が 来 た ど こ に 来 た」 と 繰 り 返 す リ ズ ム の 良 さ を 感 じ ま し ょ う。
- 高 野 辰 之 が 描 い た「日 本 の 春」 と、 君 の 知 る「今 の 春」 を 比 べ て み ま し ょ う。
- 『春 が 来 た』 の よ う に、 君 が 知 っ て い る「四 季 の 唱 歌」 を 挙 げ て み ま し ょ う。
指導要領との対応
このページは、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」音楽 第1学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 中1音楽 — 我 が 国 の 自 然 や 四 季 を 描 い た 歌 を 味 わ う
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
指導案 教員向け・授業展開の例
中1 音 楽 で、 日 本 唱 歌 の 古 典 を 味 わ う。 作 詞・作 曲 者 の 背 景 と、 歌 詞 の 美 し さ を 通 し て、 日 本 文 化 の 春 観 を 学 ぶ。
指導目標
- 『春 が 来 た』 を 唄 え る
- 高 野・岡 野 コ ン ビ を 知 る
- 日 本 唱 歌 文 化 を 理 解
授業の流れ
- 10分 『春 が 来 た』 を 一 緒 に 歌 う
- 15分 作 詞 者 高 野 辰 之・作 曲 者 岡 野 貞 一 を 紹 介
- 10分 三 番 ま で の 場 面 展 開 を 分 析
- 10分 自 分 で「私 の 春」 を 短 い 詞 で 書 い て み る
学習メモ
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AI 先生に聞く
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出典・ライセンス
- 原文: 高野辰之 作詞・岡野貞一 作曲「高 野 辰 之『春 が 来 た』─ 日 本 唱 歌 の 故 郷」(1910年)
- 入力テキスト: 国立国会図書館デジタルコレクション (尋常小学読本唱歌) (底本:高 野 辰 之 (作 詞) ・ 岡 野 貞 一 (作 曲)『春 が 来 た』(明 治 43 年 ・ 1910 年 尋 常 小 学 読 本 唱 歌)。 同 コ ン ビ に よ る『故 郷』『朧 月 夜』『紅 葉』 と 並 ぶ、 日 本 唱 歌 の 古 典 中 の 古 典。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors