フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 ─ ウ サ ギ の 繁 殖 か ら 黄 金 比 へ
中学校 数学 第2学年 数 列黄 金 比数 学 史 目安 25 分
学習のめあて
- フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 の 規 則 (前 2 項 の 和) を 理 解 す る
- 黄 金 比 (φ ≒ 1.618) と 自 然 界 の 出 現 を 学 ぶ
- 中 世 イ タ リ ア か ら ル ネ サ ン ス へ の 数 学 の 系 譜 を 知 る
本文
ウ サ ギ の 繁 殖 か ら 黄 金 比 へ
1. 1202 年、 ピ サ の 数 学 書
時 は 1202 年、 中 世 イ タ リ ア・ピ サ の 商 業 都 市。 一 人 の 32 歳 の 数 学 者 が、 一 冊 の 数 学 書 を 著 し た。
『Liber Abaci』(リ ー ベ ル・ア バ チ、 計 算 の 書)。 著 者 は レ オ ナ ル ド・フ ィ ボ ナ ッ チ (Leonardo Fibonacci, 1170 頃-1250 頃)。 父 が ア ル ジ ェ リ ア で 商 売 を し て い た 関 係 で、 フ ィ ボ ナ ッ チ は 子 ど も の 頃 か ら ア ラ ビ ア 数 学 を 学 ん だ。 そ し て 帰 国 後、 イ タ リ ア に そ の 知 を 紹 介 す る た め に、 こ の 書 を 書 い た。
『Liber Abaci』 の 大 部 分 は、 実 は ア ラ ビ ア 数 字 (0, 1, 2, …, 9) と 位 取 り 記 数 法 の 紹 介 で あ っ た。 そ れ ま で の ヨ ー ロ ッ パ は ロ ー マ 数 字 (I, II, III, IV, V, X, L, C, M …) を 使 っ て お り、 大 き な 数 の 計 算 が 困 難 で あ っ た。 フ ィ ボ ナ ッ チ が 紹 介 し た ア ラ ビ ア 数 字 に よ っ て、 ヨ ー ロ ッ パ の 商 業 と 科 学 が 飛 躍 的 に 進 化 し た。
2. 第 12 章 ─ ウ サ ギ の 繁 殖 問 題
『Liber Abaci』 の 第 12 章 に、 一 見 単 純 な 練 習 問 題 が あ っ た。
「最 初 に つ が い 1 組 の ウ サ ギ が い る。 ウ サ ギ は 1 か 月 で 大 人 に な り、 大 人 の つ が い は 毎 月 1 組 の つ が い の 子 を 産 む。 ウ サ ギ は 死 な な い。 12 か 月 後、 ウ サ ギ は 何 つ が い に な っ て い る か?」
実 際 に 計 算 し て み よ う。
| 月 | つ が い の 数 |
|---|---|
| 0 | 1 |
| 1 | 1 |
| 2 | 2 |
| 3 | 3 |
| 4 | 5 |
| 5 | 8 |
| 6 | 13 |
| 7 | 21 |
| 8 | 34 |
| 9 | 55 |
| 10 | 89 |
| 11 | 144 |
| 12 | 233 |
(注: フ ィ ボ ナ ッ チ の 元 の 問 題 は 月 0 が 0 つ が い 開 始 で、 12 か 月 後 144 と し て い る。 出 発 点 を ど う 数 え る か で 結 果 が ず れ る。)
3. 不 思 議 な 規 則
数 字 を よ く 見 て み よ う。
1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, 233, …
各 項 を 順 に 計 算 し て み る と:
1 + 1 = 2 1 + 2 = 3 2 + 3 = 5 3 + 5 = 8 5 + 8 = 13 8 + 13 = 21 13 + 21 = 34 …
そ う、 「各 項 = 前 の 2 項 の 和」 で あ る。 こ れ が「フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列」 の 規 則 で あ る。
4. 黄 金 比 と の 不 思 議 な 関 係
さ ら に 不 思 議 な こ と は、 こ の 数 列 の「隣 接 項 の 比」 を 計 算 し て み る と 見 え て く る。
2 / 1 = 2 3 / 2 = 1.5 5 / 3 = 1.667 8 / 5 = 1.6 13 / 8 = 1.625 21 / 13 = 1.615 34 / 21 = 1.619 55 / 34 = 1.6176 89 / 55 = 1.6182 144 / 89 = 1.6180 233 / 144 = 1.6181 …
ど ん ど ん「1.618…」 に 近 づ い て い く!
こ の 値「(1 + √5) / 2 ≒ 1.6180339887…」 こ そ、 古 代 ギ リ シ ア か ら「最 も 美 し い 比」 と さ れ て き た 黄 金 比 (φ、 Golden Ratio) で あ る。
5. 自 然 界 に 隠 れ た フ ィ ボ ナ ッ チ 数
驚 く べ き は、 こ の 数 列 が 自 然 界 の あ ち こ ち に 出 現 す る こ と で あ る。
- ひ ま わ り の 種 の 螺 旋 ─ 大 き な ひ ま わ り の 中 心 に 並 ぶ 種 を 数 え る と、 時 計 回 り の 螺 旋 が 55 本、 反 時 計 回 り の 螺 旋 が 89 本、 あ る い は 89 と 144 と い う「隣 接 し た フ ィ ボ ナ ッ チ 数 の ペ ア」 に な っ て い る。
- 松 ぼ っ く り の 鱗 ─ 似 た よ う な フ ィ ボ ナ ッ チ 螺 旋 が 現 れ る。
- パ イ ナ ッ プ ル の 表 面 ─ 同 上。
- オ ウ ム ガ イ の 殻 ─ 黄 金 比 で 巻 く 「対 数 螺 旋」 と し て 知 ら れ る。
- 花 び ら の 枚 数 ─ 3, 5, 8, 13 と い う フ ィ ボ ナ ッ チ 数 が 多 い (バ ラ、 ヒ マ ワ リ、 マ ー ガ レ ッ ト、 デ イ ジ ー 等)。
な ぜ こ う な る の か? 数 学 者・生 物 学 者 の 推 測 で は、 「最 も 効 率 的 に 種 や 葉 を 詰 め 込 む 方 法」 が 自 然 と 黄 金 比 に な り、 そ の 結 果 と し て フ ィ ボ ナ ッ チ 数 が 現 れ る、 と さ れ る。
6. 数 と 自 然 の 詩
フ ィ ボ ナ ッ チ の「ウ サ ギ の 数 列」 は、 1202 年 の 練 習 問 題 か ら 生 ま れ た。 そ の 8 0 0 年 後、 数 学 者・芸 術 家・生 物 学 者・建 築 家 ─ 多 く の 人 々 が こ の 数 列 と 黄 金 比 に 魅 了 さ れ 続 け て い る。
ひ ま わ り の 種 を 数 え る と き、 君 は 1202 年 の イ タ リ ア の 数 学 者 と、 同 じ 自 然 の 数 を 見 て い る の だ。
数 学 と は、 自 然 が 隠 し て い る 詩 を、 言 葉 で 表 現 す る 仕 事 で あ る。 そ の 詩 の 一 つ が、 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, … と い う 短 い 数 列 の 中 に、 800 年 残 っ て い る。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 (Fibonacci sequence) K 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144, … と い う 数 列。 規 則 は「各 項 = 前 の 2 項 の 和」。 つ ま り a₁ = 1, a₂ = 1, aₙ = aₙ₋₁ + aₙ₋₂。 こ の 単 純 な 規 則 か ら、 自 然 界 の あ ら ゆ る 螺 旋・配 列 が 現 れ る 不 思 議 な 性 質 を 持 つ。
- レ オ ナ ル ド・フ ィ ボ ナ ッ チ (Leonardo Fibonacci) K 1170 頃-1250 頃。 中 世 イ タ リ ア・ピ サ の 数 学 者。 本 名 レ オ ナ ル ド・ピ サ ノ (Leonardo Pisano、 「ピ サ 出 身」 の 意)。 「フ ィ ボ ナ ッ チ (= Filius Bonacci、 ボ ナ ッ チ の 息 子)」 は 通 称。 父 が ア フ リ カ・ア ル ジ ェ リ ア の 商 人 と し て 滞 在 し た 際 に、 同 行 し て ア ラ ビ ア 数 学 を 学 ぶ。 1202 年 帰 国 後『Liber Abaci』(計 算 の 書) を 著 し、 ア ラ ビ ア 数 字 (0, 1, 2, …, 9) を ヨ ー ロ ッ パ に 紹 介。
- 『Liber Abaci』(リ ー ベ ル・ア バ チ、 計 算 の 書) K 1202 年、 フ ィ ボ ナ ッ チ が 著 し た 数 学 書。 こ の 書 で フ ィ ボ ナ ッ チ は、 (1) ア ラ ビ ア 数 字 (0, 1, 2, …, 9) と 位 取 り 記 数 法 を ヨ ー ロ ッ パ に 紹 介 し (そ れ ま で の ロ ー マ 数 字 を 駆 逐)、 (2) 商 業 計 算・利 子 計 算・両 替 計 算 等 の 実 用 数 学 を 体 系 化 し、 そ し て (3) 第 12 章 で「ウ サ ギ の 繁 殖 問 題」 を 提 起 し て 後 の「フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列」 の 概 念 を 与 え た。 中 世 ヨ ー ロ ッ パ 数 学 の 出 発 点 と さ れ る。
- ウ サ ギ の 繁 殖 問 題 K 『Liber Abaci』 第 12 章 の 有 名 な 問 題。 「最 初 に つ が い 1 組 の ウ サ ギ が い る。 ウ サ ギ は 1 か 月 で 大 人 に な り、 大 人 の つ が い は 毎 月 1 組 の つ が い の 子 を 産 む。 ウ サ ギ は 死 な な い。 12 か 月 後、 ウ サ ギ は 何 つ が い に な っ て い る か?」 答 え: 144 つ が い。 月 ご と の つ が い 数 が 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55, 89, 144 と 増 え て い く。 こ れ が「フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列」。
- 黄 金 比 (お う ご ん ひ、 Golden Ratio、 φ) K φ ≒ 1.6180339887… (無 限 に 続 く 無 理 数)。 「1 + √5」 を 2 で 割 っ た 値。 古 代 ギ リ シ ア か ら 「最 も 美 し い 比」 と さ れ、 パ ル テ ノ ン 神 殿・ミ ロ の ヴ ィ ー ナ ス・モ ナ リ ザ 等 の 構 図 に 用 い ら れ た と さ れ る (一 部 は 後 世 の 解 釈)。 フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 の 隣 接 項 の 比 (例: 89/55, 144/89, 233/144 …) は こ の 黄 金 比 に 収 束 す る。
- フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 と 自 然 界 K ひ ま わ り の 種 の 螺 旋 配 列 (時 計 回 り と 反 時 計 回 り の 螺 旋 数 が 隣 接 し た フ ィ ボ ナ ッ チ 数: 21 と 34、 34 と 55、 55 と 89 等)、 松 ぼ っ く り の 鱗 の 配 列、 パ イ ナ ッ プ ル の 表 面、 オ ウ ム ガ イ の 殻 の 螺 旋、 花 び ら の 枚 数 (3, 5, 8, 13 が 多 い) ─ 自 然 界 に は フ ィ ボ ナ ッ チ 数 が 数 多 く 出 現 す る。 進 化 過 程 で「効 率 的 な 詰 め 込 み」 を 実 現 す る 自 然 の 解 で あ る と 推 測 さ れ て い る。
- ア ラ ビ ア 数 字 の ヨ ー ロ ッ パ 紹 介 K フ ィ ボ ナ ッ チ の 最 大 の 功 績 は、 「ウ サ ギ の 数 列」 よ り も、 実 は「ア ラ ビ ア 数 字 を ヨ ー ロ ッ パ に 紹 介 し た」 こ と か も し れ な い。 そ れ ま で ヨ ー ロ ッ パ は ロ ー マ 数 字 (I, II, III, IV, V, …, M で 1000) を 使 っ て お り、 大 き な 数 の 計 算 が 困 難 で あ っ た。 フ ィ ボ ナ ッ チ が 紹 介 し た ア ラ ビ ア 数 字 (0, 1, 2, …, 9) と 位 取 り 記 数 法 に よ っ て、 ヨ ー ロ ッ パ で 商 業 計 算・科 学 計 算 が 飛 躍 的 に 進 化 し た。
考えてみよう
- フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 の 第 13 項、 第 14 項、 第 15 項 を 計 算 し て み ま し ょ う。 (答 え: 233, 377, 610)
- 「フ ィ ボ ナ ッ チ 数 の 隣 接 項 の 比 は 黄 金 比 に 収 束 す る」 こ と を、 実 際 に 89/55、 144/89、 233/144 を 電 卓 で 計 算 し て 確 か め て み ま し ょ う。 (どれも約 1.618 に近づく)
- ひ ま わ り、 松 ぼ っ く り、 パ イ ナ ッ プ ル に フ ィ ボ ナ ッ チ 数 が 隠 れ て い る こ と か ら、 「数 学 と 自 然」 の 関 係 を 自 分 の 言 葉 で 述 べ て み ま し ょ う。
指導要領との対応
このページは、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」数学 第2学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。
- 中学数学 第2学年 — A. 数 と 式 ・ 関 数 と 数 列 の 基 礎
- 高校数学B — 数 列 ・ 漸 化 式
※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。
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出典・ライセンス
- 原文: 編集部 (レオナルド・フィボナッチ『Liber Abaci』に基づく)「フ ィ ボ ナ ッ チ 数 列 ─ ウ サ ギ の 繁 殖 か ら 黄 金 比 へ」(1202年)
- 入力テキスト: 編集部による教材化 / Leonardo Pisano『Liber Abaci』(1202) (底本:中 世 イ タ リ ア・ピ サ の 数 学 者 レ オ ナ ル ド・フ ィ ボ ナ ッ チ (Leonardo Pisano、 後 に Fibonacci と 呼 ば れ る、 1170-1250 頃) が 1202 年 著『Liber Abaci』(計 算 の 書) で 提 起 し た「ウ サ ギ の 繁 殖 問 題」 か ら 導 か れ る 数 列。 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, … 各 項 が「前 の 2 項 の 和」 で 表 さ れ、 ま た 隣 接 項 の 比 が「黄 金 比 (φ ≒ 1.618)」 に 収 束 す る 不 思 議 な 性 質 を 持 つ。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
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