文 字 式 の 発 見 ─ ウ ィ エ ー ト と デ カ ル ト の表紙イラスト

文 字 式 の 発 見 ─ ウ ィ エ ー ト と デ カ ル ト

中学校 数学 第1学年 文 字 式代 数 学数 学 史 目安 25 分

作者
編集部 (フランソワ・ウィエート / ルネ・デカルトの業績に基づく)(ウ ィ エ ー ト: 1540–1603 / デ カ ル ト: 1596–1650)
原作発表
1591 年(16~17 世紀ヨーロッパ)
出典
編集部による教材化
底本:16 世 紀 末、 フ ラ ン ス の 数 学 者 フ ラ ン ソ ワ・ウ ィ エ ー ト (François Viète, 1540-1603) が『解 析 術 入 門』(In artem analyticen isagoge, 1591) で 数 式 に「文 字」 を 体 系 的 に 使 う こ と を 始 め、 17 世 紀 ル ネ・デ カ ル ト (René Descartes, 1596-1650)『方 法 序 説』(1637) で 現 在 と 同 じ「x, y, z = 未 知 数 / a, b, c = 既 知 数」 の 約 束 が 定 着。 中 学 1 年 で『文 字 を 使 っ た 式』 を 学 ぶ 単 元 の 物 語 教 材。

学習のめあて

  • 文 字 式 が ど の よ う に 数 学 に 登 場 し た か を 知 る
  • 「文 字 で 数 を 表 す」 こ と の 数 学 的 意 味 を 理 解 す る
  • 「x = 未 知 数」 と い う 約 束 が ど こ か ら 来 た か を 学 ぶ

本文

文 字 式 の 発 明 ─ 1500 年 ま で の 数 学 と そ の 後

1. 文 字 が な か っ た 時 代

ま ず、 想 像 し て み よ う。

「文 字 式」 が 存 在 し な か っ た 時 代 の 数 学 を。

紀 元 前 の エ ジ プ ト で、 ピ ラ ミ ッ ド を 建 て る 大 工 さ ん が 計 算 を す る と き。 古 代 ギ リ シ ア で、 ユ ー ク リ ッ ド が『原 論』 を 書 く と き。 古 代 中 国 で、『九 章 算 術』 を 編 ま れ る と き。 中 世 イ ス ラ ム 世 界 で、 ア ル・フ ワ ー リ ズ ミ ー が「ア ル ジ ェ ブ ラ」 (= 代 数 学 の 語 源) を 著 し た と き。

そ れ ら は す べ て、 「2 + 3 = 5」「7 × 8 = 56」 と い っ た「具 体 的 な 数 だ け」 で 書 か れ て い た。

「a + b = b + a」 と い う 一 般 的 な 交 換 法 則 を 表 現 す る 手 段 が、 数 学 に は 存 在 し な か っ た の だ。


2. 法 則 を 文 章 で 説 明 す る 苦 労

例 え ば、 「ど ん な 二 つ の 数 を 取 っ て も、 そ の 和 は 順 番 を 入 れ 替 え て も 同 じ」 と い う 当 た り 前 の 法 則 を、 古 代・中 世 の 数 学 者 は こ う 説 明 し た。

「あ る 二 つ の 数 を 取 る。 そ の 二 つ の 数 を 足 す と、 一 つ の 値 が 得 ら れ る。 同 じ 二 つ の 数 を、 順 番 を 入 れ 替 え て 足 し て も、 同 じ 値 が 得 ら れ る。」

文 章 で は 数 行 だ。 し か し も っ と 複 雑 な 法 則、 例 え ば「(a + b)² = a² + 2ab + b²」 を 文 章 で 書 こ う と す る と、 数 ペ ー ジ に な る。

数 学 が 進 歩 す る た め に は、 「一 般 的 な 数」 を 表 す 記 号 が 必 要 で あ っ た。


3. 1591 年、 フ ラ ン ス の ウ ィ エ ー ト

そ し て 1591 年、 フ ラ ン ス の 数 学 者 フ ラ ン ソ ワ・ウ ィ エ ー ト (François Viète, 1540-1603) が、 著 書『解 析 術 入 門』(In artem analyticen isagoge) で、 数 学 史 上 の 革 命 を 起 こ し た。

ウ ィ エ ー ト は、 ア ル フ ァ ベ ッ ト の 文 字 を 数 式 に 体 系 的 に 用 い る こ と を 始 め た。 母 音 (A, E, I, O, U) を 未 知 数、 子 音 (B, C, D, F, …) を 既 知 数 と し て 区 別。

例 え ば、 「A + B = B + A」 と 書 け ば、 「ど ん な 二 つ の 数 A と B を 取 っ て も、 そ の 和 は 順 番 を 入 れ 替 え て も 同 じ」 と い う 法 則 を、 一 行 で 表 現 で き る よ う に な っ た。

ウ ィ エ ー ト は こ の 業 績 で「代 数 学 の 父」 と 呼 ば れ る よ う に な っ た。


4. 1637 年、 デ カ ル ト の『幾 何 学』

ウ ィ エ ー ト の 文 字 式 を、 現 代 と 同 じ 形 に 完 成 さ せ た の が、 フ ラ ン ス の 哲 学 者・数 学 者 ル ネ・デ カ ル ト (René Descartes, 1596-1650) で あ っ た。

1637 年、 デ カ ル ト は『方 法 序 説』(Discours de la méthode) と そ の 付 録『幾 何 学』(La Géométrie) を 著 し た。 そ の 中 で、 現 代 の 数 学 表 記 を ほ ぼ 完 成 さ せ た。

  • x, y, z = 未 知 数 (ま だ 分 か ら な い 数)
  • a, b, c = 既 知 数 (す で に 分 か っ て い る 数)
  • 上 付 き 指 数 (x², y³, …)
  • +, - 等 の 演 算 記 号

こ の 約 束 が、 400 年 経 っ た 21 世 紀 で も そ の ま ま 使 わ れ て い る。 君 が ノ ー ト に「3x + 5 = 14」 と 書 く と き の x、 そ し て「a + b = b + a」 と 書 く と き の a と b は、 1591 年 ウ ィ エ ー ト と 1637 年 デ カ ル ト が 数 学 に 贈 っ た 遺 産 で あ る。


5. 文 字 式 が も た ら し た 革 命

文 字 式 の 発 明 は、 数 学 を「個 別 の 計 算 (3 + 5 = 8 等)」 か ら「一 般 的 法 則 の 学 問 (a + b = b + a 等)」 へ と 変 え た。

数 学 は、 文 字 式 と い う 道 具 を 手 に 入 れ た 17 世 紀 以 降、 爆 発 的 に 進 化 し た。

  • 1665 年 頃、 ニ ュ ー ト ン が 微 分 積 分 を 発 明
  • 1684 年、 ラ イ プ ニ ッ ツ が 微 分 積 分 の 独 立 発 表
  • 1687 年、 ニ ュ ー ト ン『プ リ ン キ ピ ア』 で 万 有 引 力 と 古 典 力 学 を 完 成

こ れ ら す べ て が、 ウ ィ エ ー ト と デ カ ル ト の 文 字 式 を 前 提 と し て い た。 文 字 式 が な け れ ば、 ニ ュ ー ト ン の 法 則「F = ma」 も、 ア イ ン シ ュ タ イ ン の「E = mc²」 も、 書 け な か っ た。


6. 中 1 で 学 ぶ「文 字 式」 と い う 第 一 歩

中 学 1 年 で 突 然 出 て く る「文 字 を 使 っ た 式」 ─ そ れ は、 1591 年 ウ ィ エ ー ト 以 来 の、 数 学 史 上 最 大 の 革 命 の 入 口 で あ る。

「a × 2 = 2a」 と い う 一 見 当 た り 前 の 約 束 を 学 ぶ こ と は、 「数 学 を、 個 別 の 計 算 か ら 一 般 的 法 則 へ と 拡 張 す る」 と い う 巨 大 な 一 歩 で あ る。

そ の 一 歩 を、 君 は 今、 ノ ー ト の 一 行 で 踏 ん で い る。 ウ ィ エ ー ト と デ カ ル ト が 400 年 前 に 残 し た 道 を、 君 が 歩 い て い る の だ。

語句の意味

各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について

  • 文 字 式 (も じ し き) K 「a, b, c, x, y, z」 等 の 文 字 を 使 っ た 数 式。 中 学 1 年 で 学 び 始 め る 数 学 の 基 礎 概 念。 文 字 は「ま だ 決 ま っ て い な い 数 (未 知 数)」 や「ど ん な 数 で も 表 せ る 一 般 的 な 数 (変 数)」 を 表 す。 「a + b = b + a」 の よ う な 一 般 的 法 則 や、 「3x + 5 = 14」 の よ う な 方 程 式 を 書 く た め に 不 可 欠。
  • フ ラ ン ソ ワ・ウ ィ エ ー ト (François Viète) K 1540–1603。 フ ラ ン ス の 法 律 家・数 学 者。 ナ ン ト 出 身、 ア ン リ 3 世・4 世 の 顧 問 を 務 め つ つ 数 学 を 研 究。 1591 年 著『解 析 術 入 門』(In artem analyticen isagoge) で、 数 式 に「文 字」 を 体 系 的 に 使 う こ と を 始 め た。 「代 数 学 の 父」 と 評 さ れ る。 母 音 (A, E, I, O, U) を 未 知 数、 子 音 (B, C, D, F …) を 既 知 数 と し て 区 別 し た。
  • 『解 析 術 入 門』(In artem analyticen isagoge, 1591) K フ ラ ン ソ ワ・ウ ィ エ ー ト の 主 著 (1591 年 出 版)。 数 式 に「文 字」 を 用 い る こ と を 体 系 化 し た 数 学 史 上 の 画 期 的 著 作。 そ れ ま で の 数 学 は、 具 体 的 な 数 (3, 7, 12 等) だ け を 使 っ て お り、 「ど ん な 数 で も 同 じ 法 則 が 成 り 立 つ」 と い う「一 般 的 法 則」 を 書 く 手 段 が な か っ た。 ウ ィ エ ー ト の 文 字 が こ の 問 題 を 解 決 し た。
  • ル ネ・デ カ ル ト (René Descartes) K 1596–1650。 フ ラ ン ス の 哲 学 者・数 学 者。 「我 思 う、 ゆ え に 我 あ り」 で 有 名 な 近 代 哲 学 の 出 発 点。 1637 年 著『方 法 序 説』(Discours de la méthode) の 付 録「幾 何 学」 で、 現 代 の 数 学 表 記 (x, y, z = 未 知 数 / a, b, c = 既 知 数、 上 付 き 指 数、 + - 等) を 確 立。 デ カ ル ト 座 標 系 の 発 明 者 と し て も 知 ら れ る。
  • 「x, y, z = 未 知 数 / a, b, c = 既 知 数」 の 約 束 K デ カ ル ト が 1637 年『幾 何 学』 で 確 立 し た 数 学 表 記 の 約 束。 ア ル フ ァ ベ ッ ト の 最 後 (x, y, z) を「ま だ 分 か ら な い 未 知 数」 と し、 最 初 (a, b, c) を「す で に 与 え ら れ た 既 知 数」 と す る。 こ の 約 束 が 400 年 経 っ た 21 世 紀 で も 使 わ れ 続 け る 理 由 は、 「未 知 数 と 既 知 数 を 一 目 で 区 別 で き る」 と い う 実 用 性 に あ る。
  • 1500 年 ま で の 数 学 ─ 文 字 が な か っ た 時 代 K 古 代 エ ジ プ ト・ギ リ シ ア・中 国・イ ス ラ ム 世 界 の 数 学 は、 全 て「具 体 的 な 数」 だ け で 書 か れ て い た。 「2 + 3 = 5」「7 × 8 = 56」 の よ う な 個 別 の 計 算 だ け。 「a と b と い う ど ん な 数 を 取 っ て も、 a + b = b + a (交 換 法 則)」 を 表 現 す る 手 段 が な か っ た。 法 則 は 全 て 文 章 で 説 明 さ れ た。
  • 文 字 式 が も た ら し た 革 命 K ウ ィ エ ー ト・デ カ ル ト の 文 字 式 革 命 は、 数 学 を「個 別 の 計 算」 か ら「一 般 的 法 則 の 学 問」 へ と 変 え た。 そ れ ま で 数 ペ ー ジ の 文 章 で 説 明 さ れ て い た 法 則 が、 「a + b = b + a」 の 一 行 で 表 せ る よ う に な っ た。 17 世 紀 以 降 の ニ ュ ー ト ン 力 学・微 積 分・解 析 学 等、 全 て の 近 代 数 学 と 自 然 科 学 の 出 発 点 が こ の「文 字 式」 で あ っ た。

考えてみよう

  1. 「文 字 式 が な か っ た 時 代 の 数 学」 と「文 字 式 が あ る 数 学」 の 違 い を、 自 分 の 言 葉 で 説 明 し て み ま し ょ う。
  2. 「x = 未 知 数 / a = 既 知 数」 と い う デ カ ル ト の 約 束 が、 400 年 経 っ た 現 代 で も 使 わ れ 続 け る 理 由 を 考 え て み ま し ょ う。
  3. ウ ィ エ ー ト と デ カ ル ト が 文 字 式 を 発 明 し て く れ た お か げ で、 ど ん な「数 学 の 法 則」 が 1 行 で 書 け る よ う に な っ た で し ょ う か? 自 分 の 知 っ て い る 公 式 で 試 し て み ま し ょ う。

指導要領との対応

このページは、文部科学省「中学校学習指導要領(平成29年告示)」数学 第1学年の 以下の指導事項を意識して編集しています。

  • 中学数学 第1学年 — A. 数 と 式 ─ 文 字 を 用 い た 式

※ 文部科学省告示の本文ではなく、編集者による要旨の言い換えです。 正確な指導事項は文部科学省の公式資料を参照してください。

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出典・ライセンス

  • 原文: 編集部 (フランソワ・ウィエート / ルネ・デカルトの業績に基づく)「文 字 式 の 発 見 ─ ウ ィ エ ー ト と デ カ ル ト」(1591年)
  • 入力テキスト: 編集部による教材化 (底本:16 世 紀 末、 フ ラ ン ス の 数 学 者 フ ラ ン ソ ワ・ウ ィ エ ー ト (François Viète, 1540-1603) が『解 析 術 入 門』(In artem analyticen isagoge, 1591) で 数 式 に「文 字」 を 体 系 的 に 使 う こ と を 始 め、 17 世 紀 ル ネ・デ カ ル ト (René Descartes, 1596-1650)『方 法 序 説』(1637) で 現 在 と 同 じ「x, y, z = 未 知 数 / a, b, c = 既 知 数」 の 約 束 が 定 着。 中 学 1 年 で『文 字 を 使 っ た 式』 を 学 ぶ 単 元 の 物 語 教 材。)
  • 原文の権利: パブリックドメイン
  • 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors