建 部 賢 弘 と 無 限 級 数 ─ 江 戸 数 学 の 頂 点
中学校 数学 第1学年 古典 数 学 史和 算 文 化 目安 20 分
学習のめあて
- 建 部 賢 弘 と 関 孝 和 の 系 譜 を 知 る
- 「無 限 級 数」 の 概 念 に 触 れ る
- 江 戸 和 算 の 世 界 最 高 水 準 性 を 体 感 す る
本文
建 部 賢 弘 ─ 江 戸 数 学 の 頂 点
関 孝 和 (1642 頃 –1708) ─ 江 戸 数 学 史 最 大 の 天 才 (本 サ イ ト で 既 習)。
そ の 弟 子 の 中 で、 師 を も 凌 ぐ 仕 事 を し た の が 建 部 賢 弘 (た け べ か た ひ ろ、 1664–1739) で あ る。
彼 の 業 績:
- 円 周 率 を 小 数 点 以 下 42 桁 ま で 計 算 (1722) ─ 当 時 の 世 界 最 高 水 準
- 無 限 級 数 を 用 い た 計 算 法 を 確 立
- ベ ル ヌ ー イ 数 を ヨ ー ロ ッ パ よ り 早 く 発 見 し た と さ れ る
- 江 戸 幕 府 の 数 学 役 と し て 仕 え る
『綴 術 算 経』 ─ 和 算 の 集 大 成
1722 年、 建 部 が 58 歳 の と き 完 成 さ せ た の が 『綴 術 算 経』 (て つ じ ゅ つ さ ん け い)。
タ イ ト ル の 意 味 を 分 解 す る と:
- 「綴 (て つ)」 ─ 連 な る、 連 ね る
- 「術 (じ ゅ つ)」 ─ 方 法、 計 算 法
- 「算 経 (さ ん け い)」 ─ 数 学 の 書
合 わ せ て「連 な る (= 無 限 に 続 く) 計 算 法 の 書」 ─ つ ま り 「無 限 級 数 の 数 学 書」 で あ る。
円 周 率 42 桁
本 書 で 建 部 は、 円 周 率 (π) を こ の よ う に 計 算 し た:
π = 3.14159 26535 89793 23846 26433 83279 50288 4…
小 数 点 以 下 42 桁 ま で 正 確 で あ る。
当 時 の ヨ ー ロ ッ パ で の 円 周 率 計 算 と 比 べ て み よ う:
| 年 | 人 物 | 計 算 桁 数 |
|---|---|---|
| 1593 | フ ラ ン ソ ワ ・ ヴ ィ エ ー タ (フ ラ ン ス) | 9 桁 |
| 1610 | ル ド ル フ ・ フ ァ ン ・ ケ ー レ ン (ド イ ツ) | 35 桁 |
| 1722 | 建 部 賢 弘 (日 本) | 42 桁 |
| 1873 | ウ ィ リ ア ム ・ シ ャ ン ク ス (英 国) | 707 桁 (後 に 一 部 誤 り) |
1722 年 時 点 で、 建 部 の 42 桁 は 世 界 最 高 水 準 だ っ た。
「無 限 級 数」 と い う 道 具
建 部 が こ の 高 精 度 を 達 成 で き た の は、 「無 限 級 数」 と い う 道 具 を 使 っ た か ら で あ る。
無 限 級 数 と は、 「無 限 に 続 く 数 を 足 し 続 け る」 計 算。
不 思 議 な こ と に、 結 果 が 確 定 す る 場 合 が あ る:
1 + 1/2 + 1/4 + 1/8 + 1/16 + 1/32 + … = 2
こ の 「無 限 に 足 し 続 け る と 2 に 限 り な く 近 づ く」 と い う 計 算 を、 円 周 率 や 平 方 根 な ど の 計 算 に 応 用 す る。
ヨ ー ロ ッ パ で は、 ニ ュ ー ト ン (1666 頃) や ラ イ プ ニ ッ ツ (1670s) が 微 積 分 学 と と も に 無 限 級 数 を 体 系 化。
建 部 賢 弘 (1722) は、 鎖 国 の 日 本 で、 こ れ を 独 立 に 達 成 し た。
関 孝 和・建 部 賢 弘 の 系 譜
関 孝 和 (1642 頃 –1708) は、 弟 子 を 多 数 育 て た。 そ の 中 で 最 も 優 れ た 二 人 が:
- 建 部 賢 弘 (1664–1739) ─ 円 周 率 42 桁、 無 限 級 数
- 建 部 賢 明 (1661–1716) ─ 賢 弘 の 兄、 同 じ く 数 学 者
こ の 兄 弟 と 関 孝 和 で、 「関 派 (せ き は)」 と 呼 ば れ る 江 戸 和 算 の 中 心 学 派 が 形 成 さ れ た。
江 戸 数 学 が 残 し た も の
関 孝 和 ・ 建 部 賢 弘 の 仕 事 は、 江 戸 期 を 通 し て 日 本 に 受 け 継 が れ た。
明 治 維 新 (1868) で 西 洋 数 学 が 入 っ て き た と き、 日 本 人 が 急 速 に そ れ を 吸 収 で き た の は、 江 戸 和 算 で 培 わ れ た「数 学 の 土 壌」 が あ っ た か ら と も 言 わ れ る。
建 部 賢 弘 の 42 桁 の 円 周 率、 そ し て 無 限 級 数 の 概 念 ─ こ れ ら は、 鎖 国 の 日 本 で 育 っ た、 世 界 級 の 知 的 業 績 で あ る。
中 1 で 君 が 学 ぶ「数 と 式」 の 背 後 に、 こ う し た 巨 人 た ち の 営 み が 連 な っ て い る こ と を、 ぜ ひ 覚 え て お い て ほ し い。
語句の意味
各見出し語をクリックすると、外部辞書で詳しい意味を調べられます。 ※ Wiktionary について
- 建 部 賢 弘 (た け べ か た ひ ろ) K 1664–1739。 江 戸 中 期 の 数 学 者。 関 孝 和 の 弟 子。 円 周 率 を 小 数 点 以 下 42 桁 ま で 計 算、 ベ ル ヌ ー イ 数 を ヨ ー ロ ッ パ よ り 早 く 発 見 し た と さ れ る。 著 書『綴 術 算 経』(1722)。 江 戸 幕 府 の 数 学 役 と し て も 仕 え た。
- 綴 術 算 経 (て つ じ ゅ つ さ ん け い) K 1722 年、 建 部 賢 弘 著。 和 算 の 集 大 成 と さ れ る。 「綴 (て つ)」 = 連 ね る、 「術」 = 方 法 ─ 「無 限 に 連 な る 計 算 法 の 書」 の 意。
- 無 限 級 数 (む げ ん き ゅ う す う) K 無 限 に 続 く 数 を 足 し 続 け る 計 算。 「1 + 1/2 + 1/4 + 1/8 + … = 2」 の よ う に、 結 果 が 確 定 す る 場 合 が あ る。 ヨ ー ロ ッ パ で は ニ ュ ー ト ン・ラ イ プ ニ ッ ツ (17 世 紀 後 半) が 体 系 化、 建 部 が 独 立 に 同 様 の 方 法 を 発 達。
- 関 孝 和 (せ き た か か ず) K 1642 頃 –1708。 建 部 の 師。 本 サ イ ト sansu5/enseki-ritsu、 chugakusugaku1/seki-takakazu-tenzan で 既 習。
考えてみよう
- 建 部 賢 弘 が 1722 年 に 円 周 率 を 42 桁 ま で 求 め た こ と を、 ど う 評 価 し ま す か?
- 「無 限 に 続 く 計 算」 で 答 え が 出 る と は、 ど う い う こ と で し ょ う か?
- 鎖 国 の 日 本 で、 ヨ ー ロ ッ パ と 同 等 の 数 学 が 発 達 し た こ と を ど う 思 い ま す か?
指導案 教員向け・授業展開の例
中1 数 学 で 「数 と 計 算」 を 学 ぶ 中 で、 江 戸 和 算 の 頂 点・建 部 賢 弘 を 紹 介。 「無 限 級 数」 と い う 高 校 数 学 で 学 ぶ 概 念 に 早 く 触 れ る 入 門。
指導目標
- 建 部 賢 弘 を 知 る
- 無 限 級 数 の 概 念 に 触 れ る
- 江 戸 和 算 の 高 度 さ を 把 握 す る
授業の流れ
- 10分 関 孝 和・建 部 賢 弘 の 師 弟 関 係 を 紹 介
- 15分 円 周 率 42 桁 の 計 算 を 体 感
- 15分 「無 限 級 数」 の 入 門
- 5分 振 り 返 り
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出典・ライセンス
- 原文: 数学史 編集部「建 部 賢 弘 と 無 限 級 数 ─ 江 戸 数 学 の 頂 点」(1722年)
- 入力テキスト: 国立国会図書館 / 数学史 各種 文献 (底本:建 部 賢 弘 (1664–1739) の 『綴 術 算 経 (て つ じ ゅ つ さ ん け い)』 (1722)。 関 孝 和 の 弟 子 で、 円 周 率 を 小 数 点 以 下 42 桁 ま で 求 め た、 江 戸 数 学 の 頂 点 の 一 人。)
- 原文の権利: パブリックドメイン
- 編集・語注・発問・解説: CC BY 4.0 © project_procopios contributors